Nature ハイライト
生物海洋学:植物プランクトンと海洋細菌の相互作用
Nature 522, 7554
植物プランクトンと細菌の相互作用は海洋生態系の基盤となっているが、実験研究が難しいためにほとんど解明されていない。今回、V Armbrustたちは実験室モデル系を用いて、全球的に分布している珪藻類と共存している細菌コンソーシアの特性を調べた。コンソーシア培養実験では、Sulfitobacter sp.はインドール-3-酢酸(IAA)の分泌を介して珪藻のPseudo-nitzschia multiseriesの分裂を促進すること、そしてこのIAAは珪藻が分泌したトリプトファンとSulfitobacter sp.の内在性のトリプトファンの両方から合成されることが明らかになった。著者たちは、メタボローム解析やメタトランスクリプトーム解析を行い、IAAの存在と海洋でのIAA産生に関連する遺伝子を明らかにしている。しかし、実験室で突き止められたこの経路の生態学的関連性を十分に調べるにはさらなる研究が必要だろう。この研究は、海洋での微生物コンソーシアを支えるために使われている「通貨」を分子レベルで初めて明らかにしたもので、今後の取り組みの基盤となる。
2015年6月4日号の Nature ハイライト
神経科学:ナビゲーションの際の意思決定
発生生物学:胚でのリンパ管の起源
高エネルギー物理学: B中間子からμ粒子へのまれな崩壊の観測
地球物理学:グリーンランドの氷河上湖で排水が起こるわけ
古生物学:節足動物の肢の進化
生物海洋学:植物プランクトンと海洋細菌の相互作用
ウイルス学:中国でのH7N9インフルエンザウイルスの進化と広がり
がん:転移部位への道を開くのはLOX
分子生物学:eIF3が持つ独特の機能