Nature ハイライト
Cover Story:細胞培養で作られた腎臓:腎臓に含まれる細胞種を全部備えたヒトオルガノイド
Nature 526, 7574
表紙は、腎臓オルガノイドの全体を連続的にスキャンしたタイルスキャン蛍光免疫画像で、複雑な構造が見て取れる(タイルの実寸は5.7 × 6.4 mm)。ヒト胚での腎臓の発生は2種類の幹細胞に依存しており、1つの幹細胞種からは集合管が、もう1つからは機能を備えたネフロンが作り出される。M Little、高里実(オーストラリア・メルボルン王立小児病院ほか)たちは以前に、ヒト多能性幹細胞(hPSC)からこの両方の種類の前駆細胞を分化させられることを示している。彼らは今回、これらの構造を誘導するだけでなく、間質組織や血管などの周辺に存在する細胞種を誘導するのにも必要なシグナル伝達条件を明らかにし、それを用いて胚性腎臓の機能的な領域化を再現する腎臓オルガノイドを成長させた。このようなオルガノイドで達成された組織複雑性や機能程度は実際の腎臓に及ぶものではないが、正常なヒト胚性腎臓を再現している。重要なのは、このオルガノイドが薬剤の毒性スクリーニング、遺伝的腎疾患のモデル化、あるいは細胞療法のための特定の腎細胞種の供給源として使用できる可能性を示す証拠が提出されていることであろう。
2015年10月22日号の Nature ハイライト
がん:慢性リンパ性白血病のドライバー遺伝子
がん:慢性リンパ性白血病で発現する遺伝子群
微生物学:微生物が連携するための新しい機構
構造生物学:光に依存した遺伝子調節に関する新しい手掛かり
太陽系外惑星:消えかかった白色矮星の周りを回る崩壊しつつある惑星
流体力学:乱流の見取り図
量子物理学:量子カオス励起子ポラリトン系における非エルミート動力学
進化学:鳥類系統の見直し
生態学:生物多様性の喪失が生態系の安定性を脅かす
遺伝学:タンパク質FTOの働きのストレスによる調節