Nature ハイライト

進化:シジュウカラが教える小進化のヒント

Nature 433, 7021

シジュウカラ(Parus major)を長期にわたって調べた2つの研究から、隣り合う個体群同士で個体がしょっちゅう行き来しても遺伝的な多様性が維持されうる仕組みが明らかになった。専門家たちはこれまで、近接する個体群間では遺伝子が行き来し(これを遺伝子流動という)、2つの個体群の遺伝子プールが混じり合って一様になるだろうと考えてきた。 オランダのフリーラント島にすむシジュウカラは、生息する地区が異なると産む子の数が結構違う。島の西部のシジュウカラでは東部のものに比べて、1回の営巣で産む卵の数(一腹卵数)が平均して1.15個多いのだ。これはなぜなのか。E PostmaとA J van Noordwijkの報告によると、一腹卵数が少ないほうが生存の確率が高まって自然選択に有利だが、島西部への外部からの移住率が東部より高いため、西部ではこの選択の及ぼす影響があまり強く現れないのだという。 別の報告ではD Garantたちも、英国のワイタムの森にすむシジュウカラについて、小規模の多様性に関する同じような例を報告している。ここに暮らすシジュウカラは、林地の東部地区のものは一般に体が小さく、北部地区では大きい。これは、東部地区では密度が高く、体が大きいシジュウカラは巣を作るためにどこか他の場所に移る確率が高まるからである。「この2つの研究報告は、小進化のしくみに新たな光を当てるものだ」とD W ColtmanがNews and Viewsで解説している。

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