Nature ハイライト

惑星科学:月の極移動

Nature 531, 7595

月の断面図。両極の青緑色は揮発性物質の分布、緑色の矢印はかつての自転極、青色の矢印は現在の自転極を表す。こうした極の移動は、画面右のプロセラルム領域(熱異常や初期の活発な火成活動で知られる)の形成と進化に起因する。
月の断面図。両極の青緑色は揮発性物質の分布、緑色の矢印はかつての自転極、青色の矢印は現在の自転極を表す。こうした極の移動は、画面右のプロセラルム領域(熱異常や初期の活発な火成活動で知られる)の形成と進化に起因する。 | 拡大する

Credit: James Tuttle Keane

今回M Sieglerたちは、軌道上からの中性子分光法によって月の極で検出された水素堆積物が提起している、月の水素の空間分布に関する不可解な問題について報告している。水素の空間分布は、水氷の存在に起因すると考えられているが、現在の月温度から予想される分布とは一致していない。この問題は、「真の極移動」と呼ばれる、固体の天体上の標点が自転軸に対して回転する現象で説明できる可能性がある。著者たちは、極地の堆積物の場所と月の形状の分析を基に、プロセラルム領域直下にある低密度の熱異常によって慣性モーメントが変化した結果、真の極移動が生じたと主張している。プロセラルム領域は月の歴史の初期において地質学的に最も活発だった場所であることから、真の極移動が始まったのは数十億年前のことであり、観測された極地の水素の大部分は古く、水は早い段階で内部太陽系に運ばれていたことが示唆される。

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