Nature ハイライト
惑星科学:月の極移動
Nature 531, 7595
今回M Sieglerたちは、軌道上からの中性子分光法によって月の極で検出された水素堆積物が提起している、月の水素の空間分布に関する不可解な問題について報告している。水素の空間分布は、水氷の存在に起因すると考えられているが、現在の月温度から予想される分布とは一致していない。この問題は、「真の極移動」と呼ばれる、固体の天体上の標点が自転軸に対して回転する現象で説明できる可能性がある。著者たちは、極地の堆積物の場所と月の形状の分析を基に、プロセラルム領域直下にある低密度の熱異常によって慣性モーメントが変化した結果、真の極移動が生じたと主張している。プロセラルム領域は月の歴史の初期において地質学的に最も活発だった場所であることから、真の極移動が始まったのは数十億年前のことであり、観測された極地の水素の大部分は古く、水は早い段階で内部太陽系に運ばれていたことが示唆される。
2016年3月24日号の Nature ハイライト
有機化学:触媒を用いたオレフィンメタセシス反応
微生物海洋学:宿主を生かす海洋ファージ
がんゲノミクス:p53近接遺伝子群が腫瘍発生に関与する
惑星科学:月の極移動
人間行動学:正直は最善の策
人類学:旧石器時代の食物加工
進化生物学:中期更新世のスペインにいたヒト族はネアンデルタール人に近縁だった
神経科学:失われた記憶を取り戻す
がん免疫学:転移に対する最初の免疫応答
がん治療:発がん性非コードRNA
免疫学:アミノ酸欠乏による腸炎症の軽減