Nature ハイライト

神経科学:失われた記憶を取り戻す

Nature 531, 7595

初期アルツハイマー病モデルマウスの海馬歯状回記憶エングラム細胞(緑色)。この細胞への内側嗅内皮質(赤色)からの入力を光刺激によって増強すると、記憶が回復することが分かった。
初期アルツハイマー病モデルマウスの海馬歯状回記憶エングラム細胞(緑色)。この細胞への内側嗅内皮質(赤色)からの入力を光刺激によって増強すると、記憶が回復することが分かった。 | 拡大する

Credit: Dheeraj Roy

海馬は、エピソード記憶の符号化、固定および検索に重要な役割を持ち、また、アルツハイマー病の初期段階ではこのエピソード記憶が最も早く失われる。今回、利根川進(理研-MIT神経回路遺伝学研究センター)たちが、初期アルツハイマー病のモデルであるトランスジェニックマウスで、健忘症状は、記憶の符号化の障害ではなく検索の障害によることを明らかにしている。海馬歯状回の記憶エングラム細胞を直接活性化すると、「失われた」記憶が回復し、健忘症状は、歯状回エングラム細胞の樹状突起棘密度の漸減と相関していたことは重要である。著者たちは、歯状回エングラム細胞とその樹状突起棘の選択的救済が、初期アルツハイマー病で失われた記憶を取り戻す、新たな治療戦略につながる可能性を示唆している。

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