Nature ハイライト
微生物学:病原菌を歓待し過ぎのホスト
Nature 534, 7609
ヒトでは、サルモネラ菌が関わる胃腸炎のリスクと重症度を抗生物質の投与が高めることが知られている。また、マウスではストレプトマイシンを投与すると大腸で病原性サルモネラ(Salmonella enterica serovars)が増殖する。今回、このようなサルモネラ菌の増殖が、宿主ゲノムにコードされている酵素の誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)の活性に依存していることが明らかにされた。ストレプトマイシン投与によって盲腸粘膜のiNOSレベルが上昇し、それによって生じた活性窒素種が食物由来のガラクトースを酸化して、ガラクタル酸が生成する。この代謝産物はサルモネラ菌の増殖を促進するが、本来は腸内に存在しないものである。この研究は、環境からのシグナルが宿主の代謝過程を変化させ、腸内病原体の定着に影響する新しいエネルギー源の生成を引き起こすことがあるという、新しい考え方を示すものだ。
2016年6月30日号の Nature ハイライト
地球科学:アジアモンスーンの64万年間の記録
がん治療:併用療法でKRAS腫瘍を標的にする
発生学:初期胚におけるクロマチンの全体像
光学・フォトニクス:光に対する磁場
気候科学:森林生産力の季節変動
社会行動学:自己報酬としての攻撃行動
微生物遺伝学:細菌の低レベルの変異率を直接測定
微生物学:病原菌を歓待し過ぎのホスト
がん遺伝学:海洋生物種に見られる伝播性のがん
タンパク質折りたたみ:哺乳類ミトコンドリアのストレス応答