Nature ハイライト
Cover Story:快い音:西洋文化から隔離されてきたボリビアのチマネ族社会を対象とする研究は、音楽的協和音に対する選好が文化に起源を持つことを示唆している
Nature 535, 7613
西洋文化では、音楽的な音の組み合わせには、心地良く聞こえるもの、すなわち協和音として知覚されるものと、心地良くないもの、すなわち不協和音として知覚されるものがある。表紙は、協和音(完全五度)および不協和音(三全音)という2つの音程の周波数スペクトルを重ね合わさせたもの。協和音程の合成周波数スペクトルは、倍音列のサブセット(共通基本周波数の整数倍;白い線分)を形成する。対照的に、不協和音程の周波数スペクトルは非整数次倍音となる。協和音と不協和音との感覚的対比は生物学的に決定付けられていて、そのため人類に例外なく存在すると一般的に考えられている。J McDermottたちは今回、ボリビアのアマゾン雨林という遠隔地で、他に比べて西洋文化から隔離されてきたといえる「チマネ族」の先住民社会を対象として実験を行うことにより、こうした考え方を検証した。チマネ族は、協和音と不協和音のコードおよび発声和音を等しく心地良いものとして評価することが分かった。対照的に、ボリビアの都会・都市に住む人々は、米国在住者ほどではないにせよ、協和音を好んだ。こうした知見は、不協和音よりも協和音を好むという傾向が普遍的なものではなく、特定の種類の多声音楽を聞くことから発達するらしいことを示唆している。
2016年7月28日号の Nature ハイライト
神経科学:ドーパミンの速い信号
微生物学:ヒトの微生物相から見つかった新規抗生物質
構造生物学:コレステロール付きSmoothenedの構造
宇宙物理学:全対流状態にある恒星内の太陽型ダイナモ
気候科学:大気が海盆のダイナミクスに及ぼす影響
神経科学:神経グリア間のクロストークによる神経保護作用
免疫学:スーパー抗HIV抗体の臨床試験結果
遺伝学:ミトコンドリアDNAは代謝や老化に影響する
分子生物学:翻訳開始前のリボソームを捕捉
エピジェネティクス:不活性化されたX染色体の構造