Cover Story:この1年、それを彩る10の物語:2016年のニュースメーカー10人を選ぶ
Nature 540, 7634
我々は1年の締めくくりとして、この2016年にそれぞれの分野で世界に重要な影響を及ぼした10人の科学者「Nature’s 10」を、天文学から生殖生物学、さらには科学界における少数派の権利の擁選に至るさまざまな分野から選び出した。重力波の発見は科学界で今年最大のニュースといえるだろう。リストの1人目は、この観測計画の中心となってきたレーザー干渉計型重力波天文台(LIGO)科学コラボレーションのスポークスパーソンであるGabriela Gonzalezである。その他の9人は、トップクラスの棋士と対局して勝利を収め、世界を驚かしたコンピューター囲碁プログラム「アルファ碁」を作製した英国ディープマインド社の人工知能研究者Demis Hassabis、グレイトバリアリーフのサンゴ礁の壊滅的な白化に警鐘を鳴らした、オーストラリア研究会議サンゴ礁研究センター所長Terry Hughes、強力な温室効果ガスのハイドロフルオロカーボン(HFC)生産を停止させる国際協定の基盤を作り上げた大気化学者Guus Velders、ジカウイルス感染と小頭症児との関連を確立した、ブラジルの疫学研究者Celina M Turchi、「科学知識への自由なアクセス」のために自分の運営するウェブサイトSci-Hubで6000万を超える論文を公開し、無料で読めるようにして科学出版業界に挑戦したカザフスタンの大学院生Alexandra Elbakyan、3人からのDNAが存在することになるミトコンドリア置換技術を使って健康な男子の出生に成功し、批判と喝采の両方を浴びた不妊治療の専門家 John Zhang、自らも開発に関わった遺伝子ドライブ(CRISPR–Cas法によって編集した遺伝子を正常な遺伝子よりも速く集団内に広げる手法)の危険性について警告を発した生物学者Kevin Esvelt、太陽に最も近い恒星プロキシマ・ケンタウリを周回するほぼ地球サイズの惑星を発見した天文学者Guillem Anglada-Escudé、それに LGBTなどの性やジェンダーに関する少数派に属する物理学研究者が直面する困難や差別に関する意識を高めることを求めた物理学者Elena Longである。
2016年12月22日号の Nature ハイライト
ウイルス学:メタトランスクリプトミクス解析で明らかになった多様性に満ちたウイルスの世界
微生物学:ダイエット後に体重が増える仕組み
がん:転移の有力な機構
物性物理学:量子スピン液体であることが明らかになったYbMgGaO4
超分子化学:100個以上の構成要素からなる自己集合錯体
植物生物工学:化学物質の噴霧による作物の増収
心血管疾患:抗アテローム性動脈硬化作用のシグナル伝達
細胞生物学:mRNAの品質管理
構造生物学:サルモネラのインジェクチソームの詳細な構造
構造生物学:CB1カンナビノイド受容体の構造
構造生物学:活性を持つRNAポリメラーゼIの構造