Nature ハイライト
生物物理学:GPCRによるGタンパク質活性化を追う
Nature 547, 7661
Gタンパク質共役受容体(GPCR)を介したシグナル伝達は、ヒトの生理と疾患に中心的役割を果たしており、そのため、受容体活性化の下流におけるリガンドの有効性の分子基盤の解明は、疾患の治療法開発に重要である。GPCRの1つであるβ2アドレナリン受容体(β2AR)では、受容体の活性化とGタンパク質のGsとの連結の際に、受容体の膜貫通ヘリックス6(TM6)が外向きに動く。今回S Blanchardたちは、一分子蛍光共鳴エネルギー移動(smFRET)画像化法を用いて、受容体活性化の有効性の異なるさまざまなリガンドと結合したβ2ARのTM6の動きを直接観察した。その結果、部分アゴニストと完全アゴニストは、TM6の動きに対して、リガンドの有効性に依存して異なる影響を及ぼすことが明らかになった。TM6のこのような動きの違いが、β2ARとGDP結合型のGsとの連結速度やGs活性化につながるヌクレオチド変換効率の調節を変化させる。この研究により受容体のリガンド結合ポケットとヌクレオチド結合ポケットの間のアロステリックな結び付きについて、一分子レベルでの手掛かりが得られ、Gタンパク質活性化機構の解明が進んだ。
2017年7月6日号の Nature ハイライト
古気候学:暖水の上昇によって生じる氷床の後退
気候科学:氷の消失が生物多様性のホットスポットを脅かす
がんゲノミクス:非コード領域の乳がんドライバー変異
細胞周期:染色体構造の動的変化
生物物理学:GPCRによるGタンパク質活性化を追う
エレクトロニクス:ナノテクノロジーを使用するデータ記憶への理にかなった一歩
免疫学:T細胞受容体レパートリーの決定
免疫学:抗原特異性の予測
細胞死:化学療法が誘導する細胞死