Nature ハイライト
Cover Story:動的な転位:原子スケールのシミュレーションによって応力下で結晶が壊れずに変形する仕組みが明らかになった
Nature 550, 7677
表紙は、転位線と呼ばれる格子欠陥の複雑なネットワークである。金属タンタルは、こうした転位線の動きによって圧縮下で壊れずに変形する。金属の塑性変形の完全に動力学的な原子論的シミュレーションは、計算負荷が極めて大きく、メソスケールの近似が必要なことが多い。今回、V Bulatovたちは、金属の塑性の完全に動力学的な原子レベルのシミュレーションを提示している。このシミュレーションは最大で2億6800万個の原子を計算しており、1回のシミュレーションで約2エクサバイト(1エクサバイト = 1018バイト)のデータが生成される。著者たちは、極めて高いひずみ速度の変形に対して体心立方金属タンタルがどのように応答するか調べた。その結果、特定の限界条件に近づくと、転位が機械的負荷を緩和できなくなり、双晶形成(結晶格子の突然の再配向)が緩和を引き継ぐことが見いだされた。さらに、こうした限界条件以下では、流動応力と転位密度は定常状態になり、タンタルはパン生地のように無制限にこねることができる。
2017年10月26日号の Nature ハイライト
植物進化学:色を生む規則的な不規則性
炎症:皮膚細胞が追い打ちをかける
創薬:阻害物質の妨害は腫瘍に有害
物性物理学:二次元の構造のスイッチング
ナノスケールデバイス:ミリ秒の分解能で細胞の質量を測定する
進化学:「雑踏した堤」を解き明かす
疫学:マラリアのメタ解析
がん:扁平円柱境界の細胞が食道がんにつながる
生物物理学:結合相手と遭遇するホットスポット