Nature ハイライト
エピジェネティクス:春に向けた種子のリセット
Nature 551, 7678
植物のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)では、冬の長期の低温曝露により花成抑制因子FLOWERING LOCUS C(FLC)のエピジェネティックなサイレンシングが引き起こされ、植物は春に花を咲かせることができるようになる。しかし、この安定的なサイレンシング状態、すなわち「春化」状態は、各世代でリセットされなければならない。今回Y Heたちは、種子特異的な転写因子LEAFY COTYLEDON1(LEC1)がFLCにおける活性クロマチン状態の確立を促進し、前胚でのde novoな発現を活性化することで、配偶子から受け継いだサイレンシング状態を解除することを明らかにしている。そしてこのFLCの活性クロマチン状態は、LEC1発現がなくなった後の種子発生後の時期へ伝えられる。これらの発見は、春化状態のリセットは胚性の転写因子による前胚でのde novoなFLCの活性化過程であって、親植物が春化を受けたかどうかにかかわらず生じることを示唆している。
2017年11月2日号の Nature ハイライト
進化学:6万世代にわたる細菌の進化
分子生物学:染色体構造におけるコヒーシンの役割
構造生物学:フィコビリソームに光を当てる
天文学:中性子星の衝突から得られたハッブル定数
素粒子物理学:チャームクォークはエネルギッシュに入れ替わる
寄生虫学:寄生性マラリア原虫における有性生殖への拘束
幹細胞:繊維芽細胞のスプライシング因子
代謝:乳酸はクエン酸回路の燃料となる
システム生物学:増殖中の微生物をモデル化する
エピジェネティクス:春に向けた種子のリセット