Nature ハイライト
核物理学:原子核時計の中の歯車
Nature 556, 7701
原子殻の遷移ではなく原子核の遷移に基づく原子核時計は、既存の原子時計の性能を上回り、基本的な物理定数の時間変化に関する予測を検証するのに役立つ可能性がある。しかし、核遷移はあまりにも短寿命であったり、現在のレーザー技術では対処できなかったりするため、核遷移の大半には、活用するのが非常に難しいという問題が伴っている。現在、トリウム229(229Th)の第一励起状態と基底状態の間の遷移が、唯一の有望な候補である。229Th原子核時計の遷移の直接検出に成功したことが2016年に報告された。今回E Peikたちは、レーザー分光法を用いて、229Thの励起状態にあるイオンの超微細構造を分解している。この光学的研究によって、磁気双極子モーメント、電気四重極モーメント、核電荷半径などの、励起状態の基本的な核特性がいくつか明らかになった。今回の知見は、229Thを用いた原子核時計に影響を及ぼすと予想される系統的不確かさの将来の分析に情報を与える。従って、今回の研究によって、原子核時計の実現にもう一歩近づいたことになる。
2018年4月19日号の Nature ハイライト
核物理学:原子核時計の中の歯車
神経科学:免疫記憶が脳疾患を変化させる
ゲノミクス:パン酵母のゲノム進化
工学:論理デバイスとメモリーデバイスをつなぐ光
ナノスケール材料:多種類の二次元金属カルコゲニドを作る
進化学:大きくなり過ぎた生殖器で危機に瀕した貝形虫類
神経科学:フェレットでより良い脳発生モデルを作る
細胞生物学:Pelotaタンパク質がリボソームを救済する
構造生物学:INO80によるクロマチンリモデリングを見る