Nature ハイライト
量子物理学:運動を測定し制御する
Nature 563, 7729
量子系のダイナミクスの測定に基づく量子系の制御は、観測される系に対する測定過程の反作用の影響を受ける。測定に基づく量子制御は、量子状態を測定し、古典的な制御系に似た方法で測定結果に応じたフィードバックをかけることによって機能する。量子領域において測定の反作用を相殺するには1に近い全体測定効率が必要だが、この目標はこれまで、共振器量子電気力学と回路量子電気力学でしか達成されていない。今回A Schliesserたちは、測定に基づく量子制御をミリメートルサイズの簿膜共振器の機械運動に適用して成功したことを報告している。達成された測定効率は0.56であり、回路量子電気力学系と同等であった。すなわち、この実験の変位感度は、Advanced LIGOや、スクイーズド光でプローブした機械共振器の現在の性能を上回っている。著者たちは、フィードバック冷却と呼ばれる技術のおかげで、このレベルの制御によって共振器を量子基底状態、つまり観測される最低の残留熱的占有数が1より十分小さい状態にすることができた。今回の成果は、量子制御とオプトメカニカルフィードバック冷却の分野の数十年にわたる努力の結果である。
2018年11月1日号の Nature ハイライト
量子物理学:運動を測定し制御する
人間行動学:AIが抱える道徳的ジレンマ
神経科学:脊髄損傷後の歩行の回復
電子工学:思ったより簡単な高周波数データリンク上での盗聴
化学:塩基を用いない鈴木–宮浦カップリング
神経科学:運動を計画中の脳
神経科学:師匠に学ぶ
微生物学:ブルース・トリパノソーマの抗原変異の制御
生物学的手法:神経系統に関わる胚盤胞補完法は前脳器官形成研究を可能にする
構造生物学:エボラウイルス核タンパク質–RNA複合体のクライオ電子顕微鏡構造