Nature ハイライト

細胞生物学:血管内皮を通り抜ける低密度リポタンパク質の輸送

Nature 569, 7757

2つの関連するリポタンパク質、すなわち低密度リポタンパク質(LDLあるいは「悪玉」コレステロール)と高密度リポタンパク質(HDLあるいは「善玉」コレステロール)の作用のバランスが乱れてLDLの比が高くなると、大動脈内皮の直下の間隙にLDLが蓄積するようになり、アテローム性動脈硬化が始まる。アテローム性動脈硬化症はヒトの最も一般的な高リスク疾患の1つであるが、LDLが血液から内皮下の間隙に移動する仕組みはまだよく分かっていない。循環血中のLDLの約半分は、LDL受容体への結合を介して内皮を通過して輸送されるが、残り半分の輸送機構はいまだ解明されていない。これまでの研究から、内皮細胞上でSR-B1受容体がHDLやLDLに結合できることが示されているが、P Shaulたちは今回、SR-B1受容体がLDLの経内皮輸送で重要な役割を担っていることを報告している。この過程には2つの細胞内タンパク質DOCK4とRac1の助けが必要である。内皮細胞でSR-B1を欠損するマウスでは、アテローム性動脈硬化になりやすい2つの遺伝的背景があっても、アテローム性動脈硬化の発症が防止されたことから、SR-B1を介したLDLの動脈壁内への内皮を通る送達を阻害する介入が、アテローム性動脈硬化症に対する新しい治療戦略になり得ると示唆される。

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