Nature ハイライト
がん:細胞競合は腫瘍発生を促進する
Nature 572, 7768
ショウジョウバエ(Drosophila)では、適応度の低い細胞を除去する細胞競合は、老化を遅らせ、異常な構造を取り除き、再生中に組織を置き換えるのに重要である。細胞競合には、膜タンパク質FlowerのアイソフォームであるLoseの発現が関わっている。Loseの発現は、Flowerの別のアイソフォームであるWinを発現する細胞(より適応度が高い)による除去につながる。今回、ヒト細胞で働いて腫瘍発生を促進する細胞選択機構が、E Morenoたちによって初めて明らかにされた。間質のLose発現細胞とWinを発現するがん細胞が相互作用すると腫瘍の増殖と転移が増進され、腫瘍は細胞適応度マーカーであるFlowerの発現を介して近隣細胞を犠牲にして競合での優位性を獲得することが示された。Flowerを抑制すると腫瘍増殖が低下するので、このタンパク質は治療標的となる可能性がある。
2019年8月8日号の Nature ハイライト
物理化学:衝突し合う低温分子
生態学:土壌線虫類の全球マッピング
幹細胞:ヒト肝細胞アトラス
生物工学:生物学的オルソゴナル制御
天文学:高赤方偏移の可視光では見えない銀河の大規模な種族
材料科学:積層グラフェンを調節可能な超伝導体に
水文学:一時的な強い降雨による効率の良い地下水の涵養
進化生物学:紅藻類に近縁な捕食者
代謝:微生物はリシンを取り込むことで酸化ストレスから自身を守る
がん:細胞競合は腫瘍発生を促進する