Nature ハイライト
神経生理学:ストレスの管理
Nature 573, 7772
少しのストレスは通常、生物を強くする。これはホルミシスとして知られる概念である。しかし、急性の闘争・逃走反応の活性化は、実際にはレジリエンスを減弱させるようである。急性ストレス要因と長期的ストレス要因の間に、このようなトレードオフがある理由は分かっていない。M Alkema、M De Rosaたちは今回、線虫の一種であるCaenorhabditis elegansにおいて逃走反応を繰り返し誘導すると、アドレナリン/ノルアドレナリンに相当するチラミンがニューロンから放出され、これが保存された細胞保護経路を抑制して、C. elegansの寿命を短縮させることを示している。彼らはさらに、チラミンが腸においてGタンパク質共役受容体を介してDAF-2/インスリン/IGF-1シグナル伝達経路を活性化し、ストレス応答遺伝子群の誘導を妨げることを実証している。対照的に、長期的な環境ストレス要因は実際にチラミン放出を低下させ、これらの保護遺伝子群の誘導を可能にした。このように、C. elegansでは、ニューロンからのチラミン放出の増加と減少がそれぞれ、急性の逃走反応を引き起こすか、長期的ストレス応答を引き起こすかを決定し、寿命に大きな影響を及ぼす。これらの経路の多くが線虫からヒトまで広く保存されていることを考えると、アドレナリン/ノルアドレナリンが同様の経路を介してヒトの健康や老化に影響を及ぼすかどうかを調べることは興味深い課題だろう。
2019年9月5日号の Nature ハイライト
神経科学:ヒト大脳皮質細胞タイプの高分解能アトラス
免疫学:周期的圧力のPIEZO1によるメカノセンシングは免疫を活性化する
神経科学:進行性多発性硬化症における細胞タイプおよび進行段階に特異的な変化
天文学:クエーサーにエネルギーを供給する高速のインフロー
ナノ科学:魔法角ねじれ2層グラフェンにおける分光観測
有機化学:含フッ素アミド構成要素の直接的合成
地球科学:小地震も大地震も同じように始まる
古生物学:太古の眼から得られた新たな視点
生態遺伝学:異なる気候でシロイヌナズナのゲノムが受ける選択
神経生理学:ストレスの管理
分子生物学:相分離の調節