Nature ハイライト
Cover Story:根を張る脳腫瘍:シナプス形成が脳腫瘍の成長を駆動する仕組み
Nature 573, 7775
脳腫瘍は、最も致命的ながんの1つである。グリオーマ(神経膠腫)と呼ばれる原発性脳腫瘍や他の臓器からの転移は、特に治療が難しい。今週号の3報の論文で、脳腫瘍の増殖の性質が調べられ、がん細胞が脳の神経ネットワークを乗っ取って一体化する仕組みが明らかになった。M MonjeたちとF Winklerたちはそれぞれ、神経膠腫がん細胞とニューロンが、機能的シナプスを形成することを見いだしている。別の論文ではD Hanahanたちが、脳に転移した乳がん細胞が、シナプス周囲のパートナーとしてシナプス構造に加わっていることを示している。がん細胞は次に、こうしたシナプスを用いて増殖を促進させる。すなわちこれらの報告により、シナプスの活性化が、がん細胞の脳での生着、悪性細胞の増殖、腫瘍の成長に関連することが見いだされ、脳腫瘍において神経活動が担う役割が浮き彫りになった。
2019年9月26日号の Nature ハイライト
電子材料:仕事関数をどこまで低くできるか?
免疫学:膜で組み立てられたTCR–CD3の高分解能クライオ電子顕微鏡構造
物性物理学:圧力下の水素
化学合成:ペルセアノールの合成
地球化学:キンバーライトは深部の孤立したマントル貯蔵庫に由来する
古生物学:明らかになった最初期の鋏角類
免疫学:細胞の生死の運命を決める可変抵抗器としてのDDX3X
がん:細胞の代謝が細胞状態の前悪性から悪性への移行を調節する
分子生物学:B細胞のV(D)J組換え機構
生化学:翻訳開始を単一分子蛍光顕微鏡で観察
生化学:低障壁水素結合を見る