Nature ハイライト

微生物学:溶原性ファージがCRISPRの喪失を引き起こす

Nature 578, 7793

 細菌に感染するウイルス(バクテリオファージ)。
細菌に感染するウイルス(バクテリオファージ)。 | 拡大する

Credit: DAVID MACK / Science Photo Library / Getty Images Plus

細菌の約60%のゲノムにはCRISPR–Cas免疫系が欠失しているという観察結果や、近縁の細菌株の間でも関連するcas遺伝子が非常に多様なことから、細菌集団ではCRISPR–Cas系の喪失と獲得が頻繁に起こっている可能性が示唆される。今回E WestraとA Chevallereauたちは、このような不均一な分布が生じる理由が、I型CRISPR–Cas系によるバクテリオファージの排除の効率が、溶原性ファージ(溶菌性と溶原性の生活環のどちらにも入れるファージ)の場合、厳密な溶菌性バクテリオファージに比べてはるかに悪いためであると推論している。これは宿主細菌にとって適応度のコストであり、細菌集団からCRISPR–Cas系が失われる原動力になる。ファージが抗CRISPR(acr遺伝子)を持っているとこの喪失効果がなくなることから、この遺伝子はファージにとってだけでなく、このような状況下では宿主にとっても有利に働くことが示唆される。また、この現象は自然界で広く見られる可能性があることも分かり、CRISPR–Cas系が細菌に不均一に分布している理由をこれで説明できるかもしれない。

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