Nature ハイライト

核物理学:原子核の鏡映非対称性の解明

Nature 580, 7801

陽子と中性子は、質量が類似していて、同じような強い相互作用を有しているので、原子核の物理を記述する便利な方法は、それらが本質的に同じでたった1つの量子数、すなわちアイソスピンだけで特徴付けられると考えることである。このアイソスピン対称性では、鏡映数の陽子と中性子を持つ核の対が同様のエネルギー準位構造を示す必要がある。しかし、陽子は荷電粒子であるので、電磁力によってこの対称性が(弱く)破れ、励起核状態にのみ関連することが多い小さなアイソスピン対称性の破れへの寄与が生じる。今回、米国の国立超伝導サイクロトロン研究所における短寿命同位体の実験によって、73Srとその鏡映核73Brの基底状態の間の大きな違いが明らかになった。この観測結果から、束縛核の基底状態における鏡映対称性の破れを示す証拠が得られたことで、原子核内部で働く力に関する知見が得られるかもしれない。

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