Nature ハイライト

分子生物学:ミトコンドリアでの翻訳に葉酸が果たす役割

Nature 554, 7690

葉酸は、ミトコンドリアから細胞質へと1炭素単位を運び出すことによってプリン類、チミジン、メチオニンの生合成に関わっており、細胞の代謝に重要な役割を担っている。ヒトのがん細胞ではミトコンドリアに局在する葉酸代謝酵素の発現が大幅に増加しているが、その理由ははっきりしていなかった。今回J Rabinowitzたちは、葉酸は細胞質での代謝に役割を担うのに加えて、ミトコンドリアでのタンパク質翻訳にも必要なことを明らかにして、がん細胞での観察結果を説明している。哺乳類のミトコンドリアは、葉酸に結合した1炭素単位を用いてコドン特異的に転移RNAをメチル化する。この修飾は呼吸鎖タンパク質の翻訳に必要であり、そのため酸化的リン酸化に必要である。著者たちはさらに、ミトコンドリア代謝異常を特徴とする一部のヒト先天性疾患、すなわち、共にミトコンドリア脳筋症でミオクローヌスてんかんを伴うMERRFと卒中様症状を伴うMELASでも、葉酸が関連する翻訳異常が起こっていることを明らかにしている。

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