米国の幹細胞研究に関する方針転換の背景には、科学界による社会への強い働きかけがあり、この姿勢を失ってはならない。
p.125
doi: 10.1038/458125a
Volume 458 Number 7235
今週のハイライト
Cover Story: 寒冷期に生きていた北京原人：古典的なホモ・エレクトゥス化石はより古く、より低温な時代のものだった
神経: 異なる感覚を共通の器官で処理する方法
物理: 光と物質の結合の時間制御
物性: 圧力下で増えるLiとNaの電気抵抗
材料: 高速充放電が可能な電池
地球: 地震への道のり
免疫: HIV/エイズでの免疫を増強する
細胞: 宿主選別のための遺伝子
細胞: 機能をもつ大型RNA
目次
Editorials
米国の代替エネルギー重視政策には、情報技術を活用した電力網の進化（スマートグリッド化）が必要だ。
p.125
doi: 10.1038/458125b
中国の環境対策はめざましく進展しているが、専制的な進め方は好ましい結果を生まないこともある。
p.126
doi: 10.1038/458126a
News
米オバマ政権が、幹細胞研究への公的助成を解禁。
p.130
doi: 10.1038/458130a
がんのオーダーメイド治療に向け、患者の遺伝子のスクリーニング研究が盛んに。
p.131
doi: 10.1038/458131a
地球重力場の詳細な観測を目指す、欧州宇宙機関（ESA）の人工衛星「GOCE」が打ち上げへ。
p.133
doi: 10.1038/458133a
中国の研究者が、鳥インフルエンザ追跡のために、湿地帯の包括的地図を初めて作製。
p.134
doi: 10.1038/458134a
オンライン科学ジャーナルの利用状況を、「クリック」を指標にして分析する研究が。
p.135
doi: 10.1038/458135a
米オバマ政権が、情報技術関連を統括する最高情報責任者（CIO）を新設。
p.136
doi: 10.1038/458136a
NEWS IN BRIEF
p.137
doi: 10.1038/458137a
News Features
エネルギー効率：エネルギーをいつでも2倍利用する
p.138
工場や発電所の排熱は莫大なエネルギーの損失だが、これを再利用するにはどうすればよいのだろうか。doi: 10.1038/458138a
概日リズム：フクロウとヒバリと目覚まし時計
p.142
体内時計の同期の乱れは、ヒトの病気に結びつくのだろうか。doi: 10.1038/458142a
News & Views
古人類学：アジアの原人類の生息時期の集中
p.153
ホモ・エレクトゥス、つまり原人類の居住地としてよく知られている中国・周口店の年代測定が再度行われ、東アジア北部の温帯および南部の赤道付近における原人類の分布の見直しが促されることになった。doi: 10.1038/458153a
炭素サイクル：海洋での不安定な傾向
p.155
北大西洋での二酸化炭素取り込みのモデル解析には、短期的変動傾向にすぎないかもしれないものを、長期気候変動の兆候と解釈することへの警告が含まれている。doi: 10.1038/458155a
神経科学：上へ下へと飛び回る
p.156
ショウジョウバエのジョンストン聴覚器官は、重力や風向も感知できることが新たにわかった。我々の内耳における場合と同じく、この器官からは複数の異なる感覚信号が並行して脳内の別々の領域に送られる。doi: 10.1038/458156a
光電子量子工学：強いものの素早い切り替え
p.157
光と物質の相互作用は、どのくらい速く行えるのだろうか。ほとんど「瞬間的」というのが、微小光共振器中に埋め込まれた半導体構造の研究から得られた答えである。doi: 10.1038/458157a
固体物理化学：金属での変化を促す圧力
p.158
金属は、どういう場合に金属でなくなるのだろう。リチウムあるいはナトリウムならば、高圧下に置かれたときだ。圧縮されて稠密になった形態でこれらの元素がみせる変わった挙動は、普通に使われている電子構造モデルがもつ難問を明らかにしている。doi: 10.1038/458158a
細胞生物学：剥がれた膜を曲げる
p.159
細胞は膜に結合している小器官を変形させるのにさまざまなタンパク質複合体を使う。そうした複合体の1つであるESCRT-IIIの活性を再構築する研究により、この複合体が意外な方法で膜を曲げていることがわかった。doi: 10.1038/458159a
追悼：Xiangzhong (Jerry) Yang氏（1959-2009）
p.161
クローン動物作出の分野で指導的立場にあったYang氏が亡くなられた。ご冥福を祈りたい。doi: 10.1038/458161a
NEWS & VIEWS Q&A 進化生物学：種分化
p.162
1859年に出版されたチャールズ・ダーウィンの偉大な著作である『種の起源』は、種分化というこの「謎中の謎」について1つの解答を与えてくれそうにみえた。現在我々は種分化について、150年前に比べるとはるかに多くのことを知っているが、1つだった謎の数は増え、可能と思われる答えも複数に増えている。doi: 10.1038/458162a
Articles
神経：ショウジョウバエの重力感覚と聴覚の神経基盤
The neural basis of Drosophila gravity-sensing and hearing p.165
doi: 10.1038/nature07810
細胞：ESCRT-III複合体による膜の切断
Membrane scission by the ESCRT-III complex p.172
doi: 10.1038/nature07836
Letters
物理：光と物質の極めて強い相互作用のサブサイクルスイッチオン
Sub-cycle switch-on of ultrastrong light–matter interaction p.178
doi: 10.1038/nature07838
物理：透明で稠密なナトリウム
Transparent dense sodium p.182
doi: 10.1038/nature07786
物性：リチウムにおける圧力誘起金属–半導体転移の直接観測
Direct observation of a pressure-induced metal-to-semiconductor transition in lithium p.186
doi: 10.1038/nature07827
材料：超高速充放電のための電池材料
Battery materials for ultrafast charging and discharging p.190
doi: 10.1038/nature07853
地球：龍門山とチベット高原の隆起と2008年Wenchuan地震（M = 7.9）
Uplift of the Longmen Shan and Tibetan plateau, and the 2008 Wenchuan (M = 7.9) earthquake p.194
doi: 10.1038/nature07837
進化：26Al/10Beによる埋没年代測定で決定された周口店のホモ・エレクトゥスの年代
Age of Zhoukoudian Homo erectus determined with 26Al/10Be burial dating p.198
doi: 10.1038/nature07741
神経：ショウジョウバエ脳での風と近接音との異なる感覚表現
Distinct sensory representations of wind and near-field sound in the Drosophila brain p.201
doi: 10.1038/nature07843
免疫：PD-1阻害によるin vivoでのSIV特異的な免疫の増強
Enhancing SIV-specific immunity in vivo by PD-1 blockade p.206
doi: 10.1038/nature07662
免疫：非常に親和性の低い抗原に対する、完全だが短縮されたT細胞応答
Complete but curtailed T-cell response to very low-affinity antigen p.211
doi: 10.1038/nature07657
細胞：細菌の宿主域を変化させるには単一の調節遺伝子で十分である
A single regulatory gene is sufficient to alter bacterial host range p.215
doi: 10.1038/nature07660
細胞：Cdc14は有糸分裂後期のRNAポリメラーゼIによる転写を阻害する
Cdc14 inhibits transcription by RNA polymerase I during anaphase p.219
doi: 10.1038/nature07652
細胞：クロマチンのパターンから明らかになった、哺乳類で高度に保存された1,000個以上の大型非コードRNA
Chromatin signature reveals over a thousand highly conserved large non-coding RNAs in mammals p.223
doi: 10.1038/nature07672
細胞：ユビキチン関連修飾因子Urm1は、真核生物の転移RNAチオール化でイオウ運搬体として働く
Ubiquitin-related modifier Urm1 acts as a sulphur carrier in thiolation of eukaryotic transfer RNA p.228
doi: 10.1038/nature07643
構造：フラビンモノヌクレオチドリボスイッチによる補酵素の認識と遺伝子制御
Coenzyme recognition and gene regulation by a flavin mononucleotide riboswitch p.233
doi: 10.1038/nature07642
