Nature ハイライト 神経:異なる感覚を共通の器官で処理する方法 2009年3月12日 Nature 458, 7235 機械信号変換、すなわち機械的な力の神経インパルスへの変換は、聴覚、触覚、重力感覚などいくつかの感覚の基盤となっている。キイロショウジョウバエの触角にあって約500個の感覚ニューロンの集団からなるジョンストン器官は、求婚相手の求愛歌による触角の振動を検知することが知られている。この器官がそれ以外の感覚も担っていることを、2つの研究チームが今回明らかにした。M Göpfertと伊藤啓(東京大学)たちは、この器官が重力による触角の屈曲を検知することを示し、萬涼子たちのチームは、風による屈曲についても同じように検知されていることを見いだした。しかし、これらの刺激に対する行動応答は異なる。それは、それぞれの刺激を別個のニューロン集団が受容するからである。このように、別個の機械感覚が単一の器官にある別個の神経経路で処理される状況は、ヒト内耳で音と平衡感覚がそれぞれ別に処理される状況を思い起こさせる。したがって、これらの結果は、機械感覚刺激検知の研究に広く適用可能なモデル系として、ショウジョウバエの遺伝学研究をさらに進める道を開くものといえる。 2009年3月12日号の Nature ハイライト 神経:異なる感覚を共通の器官で処理する方法 物理:光と物質の結合の時間制御 物性:圧力下で増えるLiとNaの電気抵抗 材料:高速充放電が可能な電池 地球:地震への道のり 免疫:HIV/エイズでの免疫を増強する 細胞:宿主選別のための遺伝子 細胞:機能をもつ大型RNA 目次へ戻る