Nature ハイライト
生態学:小さな生息地断片では個体群動態の変化が生物多様性を低下させる
Nature 584, 7820
生息地が失われたら、生物多様性はどうなるのか。生物多様性が喪失することは分かっているが、それが正確にどのように起こるのかについては、大きな混乱と疑問が残されている。果たして生物多様性の喪失は、種の喪失は自然生息地におけるそれらの個体数および分布に比例するとする「受動的抽出(passive sampling)」過程によって起こるのか、それとも小さな生息地断片での生物学的過程は大きな断片のものとは異なると仮定し、そうした差異によって小さな生息地では生息地の消失のみから予想されるより多くの種が減少するとする「生態系劣化(ecosystem decay)」過程によって起こるのか。今回J Chaseたちは、かつては同一の景観に含まれていたさまざまなサイズの多数の生息地断片から得た、複数の種の個体数に関する123件の研究データを用いて、これら2つの仮説を検証した。その結果、生態系劣化仮説が強く支持された。すなわち、全ての研究、生態系、分類群にわたって、より小さな生息地断片では、より大きな断片のサンプルに由来する予測よりも個体数と種数が少なく、群集の均一性が低いことが分かった。これらの知見は、土地利用の変化による生物多様性の喪失に関してより現実性の高い予測を行うための重要な一歩になると、著者たちは述べている。
2020年8月13日号の Nature ハイライト
物性物理学:菱面体晶グラファイトにおける強い電子相関
ナノスケール材料:バックリング構造を持つグラフェンの強い電子相関
生態学:小さな生息地断片では個体群動態の変化が生物多様性を低下させる
エピゲノミクス:ヒトのDNアーゼI高感受性部位の指標付け
神経科学:ASDマウスモデルの社会的行動の薬理学的な回復
公衆衛生:ヨーロッパにおけるCOVID-19に対する非医薬品介入の効果を推定するためのモデル化手法
感染症:COVID-19に対する社会政策の影響を定量化する
メカノバイオロジー:皮膚の伸張が皮膚の伸展につながる仕組み
化学生物学:標的タンパク質の分解を誘導するキメラ