Nature ハイライト
原子物理学:高精度測定によって原子質量の合計を修正する
Nature 585, 7823
原子質量の測定における精度の向上は、計測学や基本単位の定義に影響を及ぼし、基礎物理学実験の誤差の低減に役立っている。軽イオンの質量測定は、原子核結合エネルギーの推定に寄与する。例えば、ヘリウム3核の質量をその構成成分である陽子と重陽子の質量の合計と比較すると、三体核結合エネルギーが明らかになる可能性がある。しかし、最近の最良の推定値でも、これらの量の間には標準偏差の約5倍の不一致があることが示されており、個々の測定結果の信頼性に疑問が投げ掛けられている。今回S Rauたちは、LIONTRAPペニングトラップ質量分析計で重陽子とHD+イオンの質量測定を行い、相対的不確かさを1兆分の8まで低減させている。得られた値は共に、これまでで最も正確なもので、以前の結果とは大きく異なっている。また、これらの値によって質量の不一致の多くも解決され、ヘリウム3とトリチウムの質量のより優れた推定値が得られるとともに、陽子質量の基準値の不確かさが低減された。
2020年9月3日号の Nature ハイライト
原子物理学:高精度測定によって原子質量の合計を修正する
流体力学:上下逆転した世界
材料科学:連続波緑色ペロブスカイトレーザー
エネルギー科学:高速充電電池のアノード
細胞生物学:機能的シンシチウムを形成する網膜周皮細胞
神経変性疾患:C9orf72の喪失は炎症の抑制を解く
微生物学:腸の微生物による脳炎惹起性T細胞の活性化
腫瘍生物学:保護的な代謝環境がリンパ節転移を助長する
生化学:膜を突き抜けるデザイナーチャネル