Nature ハイライト
微生物学:腸の微生物による脳炎惹起性T細胞の活性化
Nature 585, 7823
腸内微生物相が、特に中枢神経系において、自己免疫疾患の発症の不可欠な要因の1つであることを示すいくつかの証拠がある。しかし、引き金となる腸内の部位、関与する微生物、自己免疫活性化機構など、重要な点はいまだ解明されていない。大野博司(理化学研究所ほか)たちは今回、多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を用いて、相乗的に機能して脳炎惹起性T 細胞を誘導する、腸内微生物相中の2種の細菌を特定している。無菌マウスに1種類の細菌のみを定着させたところ、エリュシペロトリクス科の菌株がEAE経過の増悪を引き起こし、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)特異性を持つ腸の自己反応性T細胞を活性化することが分かった。さらに、ラクトバチルス属のある株は、MOGを模倣する可能性のあるペプチドを持つことが示された。この両方の株を組み合わせると、より重度のEAEが誘発されることが分かり、これらの株が相乗的に機能する可能性が示唆された。
2020年9月3日号の Nature ハイライト
原子物理学:高精度測定によって原子質量の合計を修正する
流体力学:上下逆転した世界
材料科学:連続波緑色ペロブスカイトレーザー
エネルギー科学:高速充電電池のアノード
細胞生物学:機能的シンシチウムを形成する網膜周皮細胞
神経変性疾患:C9orf72の喪失は炎症の抑制を解く
微生物学:腸の微生物による脳炎惹起性T細胞の活性化
腫瘍生物学:保護的な代謝環境がリンパ節転移を助長する
生化学:膜を突き抜けるデザイナーチャネル