Nature ハイライト
Cover Story:転移温度の上昇:ついに実現された室温超伝導
Nature 586, 7829
超伝導体は、臨界温度以下においてゼロ抵抗で電流が流れる材料で、20世紀初頭から知られている。しかし、超伝導は長年、絶対零度に近い温度に限定されると考えられてきた。この考えは、1980年代に高温超伝導体が発見されたことで覆されたが、高温とはいえ、その温度は−140°C程度と低いものだった。以来、より高い温度で超伝導体になる材料の探求が盛んに行われてきた。今回R Diasたちは、ついに念願の目標だった室温で超伝導体になる材料を実現している。約15°Cで超伝導を示す、光化学的に変換した炭素質硫化水素系を作り出したのである。現時点では、この現象にはまだ、少なくとも270 GPaという高い圧力が必要だが、著者たちは、この系の化学的調整によって、より低い圧力で超伝導性を実現できると考えている。
2020年10月15日号の Nature ハイライト
天文学:平均赤方偏移1に位置する銀河からのH I 21 cm線放射
コンピューター科学:ニューロモルフィック・コンピューティングのためのシステム階層案
光物理学:量子ドットLEDの明るい未来
生態学:ヒト族進化における東南アジアの環境
神経科学:特定のニューロン集団におけるタンパク質合成が記憶の固定を導く
神経科学:ミクログリアはニューロンの興奮を弱める
微生物生態学:風疹ウイルスの近縁ウイルス
微生物学:免疫進化の物語における細菌のSTING
生化学:STAT3への可逆的な脂質付加によるTH17細胞分化の調節
生化学:不正な結合を壊す