Nature ハイライト
幹細胞:異種間キメラ形成の障壁を克服する
Nature 592, 7853
異種間キメラ(すなわち、異なる生物種由来の細胞で構成された生物)を利用すれば、大動物でヒトの臓器を成長させ、移植用の臓器不足を打開できる可能性がある。しかし、そのようなキメラ個体の中でヒト細胞はほとんど生存できず、ヒト細胞が消失する仕組みについてもよく分かっていない。今回J Wuたちは、ヒトとマウスのような進化的に離れた生物種由来の多能性幹細胞を共培養すると、プライム型の段階では競合するが、ナイーブ型段階では競合しないことを明らかにしている。これは、in vivoでは、競合が着床後の胚で起こることを示唆している。著者たちは、この競合が「敗者」細胞のNF-κBシグナル伝達の活性化に依存して起こることを見いだし、NF-κBシグナル伝達を阻害するとマウス胚でのヒト細胞の生存率が高まることを示した。まとめると、この研究から、異種間キメラの細胞競合を引き起こす機構についての手掛かりが得られ、これは、進化的に離れた生物種間でのキメラ形成を改善する上でカギとなるだろう。
2021年4月8日号の Nature ハイライト
量子情報:捕捉イオンでジャグリング
物性物理学:モアレグラフェンにおける加熱時のスピン凍結
材料科学:リチウムイオン輸送用微多孔質ポリマー
地球科学:地震の断層面解を用いたマグマの粘性の絞り込み
考古学:初期の人類の行動を示す内陸部の証拠
幹細胞:異種間キメラ形成の障壁を克服する
コロナウイルス:慢性COVID-19患者におけるSARS-CoV-2の進化
コロナウイルス:バイオンテック社/ファイザー社製ワクチン候補BNT162b1とBNT162b2の前臨床開発
分子生物学:酵母ゲノムのタンパク質構造