Nature ハイライト

生化学:反応しやすい原子を落ち着かせる

Nature 442, 7101

イオウ原子は反応性が非常に高いため、生きた細胞内での生合成機構にとってはちょっと厄介な存在である。そこで、これをきちんと制御するには特殊な方法が必要になる。今回、グルタミン酸、リシン、グルタミンのtRNAに対応する大腸菌tRNA修飾酵素がとる3つの形態の結晶構造が確定された。この酵素は、リボソーム上でのタンパク質合成の際、コドン-アンチコドンの「3番目の文字」の揺らぎの制限に重要な役割を担っている。この機能の鍵になるのは、tRNAの34位の残基ウリジン(U34)にイオウを導入してチオウリジンにする反応である。明らかにされた3つの構造は、イオウを供給するシステイン残基を活性化すると共に、触媒部位の近くへ標的のU34を近づけていく、連続的に起こる反応のようすを示している。その結果生じた「閉じた」構造の複合体では、触媒反応チャンバーが形成されて活性部位は溶媒から隔てられ、イオウの正確な取り込みが容易になる。このような機構は、反応性の高い原子を巨大分子中のあるべき位置に正確に取り込む酵素に一般的なものかもしれない。

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