Nature ハイライト 気候:気候のシーソー 2006年11月9日 Nature 444, 7116 EPICAプロジェクトの一環として行われた、南極大陸のドローニング・モード・ランドでの掘削で得られた新しい氷床コアは、次の2つの理由から特別なものである。1つめの理由は、その地理的位置である。このコアが南大西洋に面していることから、グリーンランドの氷床コアの記録に直接対応するものが南極域で初めて得られたことになり、これは、両地域が大西洋の子午面循環によって関連している可能性を示唆している。第2の理由は、ほかの近傍の掘削点と比べて堆積速度が大きいために、解像度が高くなったばかりでなく、グリーンランドの記録との同期が改善された点である。この新しいコアに含まれる15万年間の気候記録から、「バイポーラ・シーソー(bipolar seesaw)」の機構によって南極大陸における大規模な温暖化を説明できるだけではなく、北半球のより小さいダンスガード-オシュガーイベントが南極大陸の各イベントに対応することも説明できることがわかる。南半球における温暖化の変化の振幅は、同じ時期に起こった北半球の亜氷期の持続期間と比例関係をもっており、バイポーラ・シーソーの考えを支持する独立した証拠となる。 2006年11月9日号の Nature ハイライト 疫学:ゴリラもHIVの供給源? 地球:ヒマラヤ地震が起こる訳 宇宙:月の内部から噴出したガス 遺伝:勝ち残る遺伝子、消え去る遺伝子 細胞:膜内でのタンパク質分解 工学:潤滑剤の新しい波 気候:気候のシーソー 進化:四肢動物:陸上生活への長い助走 構造生物学:補体の立体構造を明らかにする 目次へ戻る