Nature ハイライト 海洋:大海をかき混ぜる 2007年5月10日 Nature 447, 7141 南極大陸を巡って流れる海流内の海洋混合は、全球の海洋循環で重要な役割を演じている。それは、高緯度水域で深海へ沈降した海水が南大洋の表層に戻ってくる速度に、海洋混合が影響を与えるからである。しかし、南極周極流内で生じる混合過程の速度と、混合によって生じる湧昇の程度は、直接観測データがないため、ほとんどわかっていない。ドレーク海峡の近くで南極周極流へ海底火山からヘリウムが放出されるという自然現象によって、この観測の不足を補う機会が得られた。この自然が行うトレーサー放出実験によって、南極周極流の南西大西洋水域での混合と湧昇の測定が可能になり、この水域では海底の起伏が大きいため、等密度面を横切る急速な混合と等密度面に沿う急速な湧昇が生じていることが示された。これは全球的な海洋鉛直循環に以前は知られていなかった「近道」を作り出し、深海へ沈降した冷たい海水は、予想されていたよりも速く表層に戻ってくることができる。 2007年5月10日号の Nature ハイライト 遺伝:「おっとり型」と「せかせか型」が共存共栄する仕組み 宇宙:さらにホットになるホットジュピター 技術:エラーも拡大 神経:脳萎縮マウスでの記憶回復 物理:リチウムでもみられた普通の超伝導 海洋:大海をかき混ぜる 進化:性差も生物多様性にかかわっている 視覚:表面の質感のとらえ方 目次へ戻る