Nature ハイライト 神経:脳萎縮マウスでの記憶回復 2007年5月10日 Nature 447, 7141 記憶力を増進したり、さらにはアルツハイマー病などの疾患で失われた記憶を回復させたりできる薬を作るという夢のような話への期待が、重度神経変性の動物モデル(CK-p25 Tgマウス)を使った新しい研究によってぐっと高まった。環境エンリッチメント(生活環境をもっと興味のもてるものにすること)とヒストン・デアセチラーゼ(HDAC)阻害剤の投与という2通りの方法で、こうしたマウスの学習能力や長期記憶が回復したのである。HDACは、ヒストンのアセチル化を促進し、それによって細胞核内での転写を変化させることで記憶形成を増進していると考えられている。重要なのは、p25マウスには重度の脳萎縮があるにもかかわらず、こうした記憶増進が起こったことだ。記憶回復には既存のニューロンネットワークの再構成が伴っていたことから、こうした再構成によって長期記憶を再び呼び出せるようになった可能性がある。 2007年5月10日号の Nature ハイライト 遺伝:「おっとり型」と「せかせか型」が共存共栄する仕組み 宇宙:さらにホットになるホットジュピター 技術:エラーも拡大 神経:脳萎縮マウスでの記憶回復 物理:リチウムでもみられた普通の超伝導 海洋:大海をかき混ぜる 進化:性差も生物多様性にかかわっている 視覚:表面の質感のとらえ方 目次へ戻る