Nature ハイライト 神経:精神障害に関係する複合体 2008年3月6日 Nature 452, 7183 オランザピンやリスペリドンなどの新世代の抗精神病薬は、セロトニン2A受容体(セロトニン2AR)を介する神経伝達を遮断することにより効力を発揮し、LSDのような幻覚剤もこれらの受容体を介して作用する。また、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸がその受容体であるmGluR2へ及ぼす作用を模倣した薬物も、強力な抗精神病薬となる。このような根拠に基づいて、統合失調症患者の脳では、セロトニンとグルタミン酸が神経伝達物質として働く系の機能が異常を来していることが示唆されている。今回、培養細胞およびマウスでの、受容体であるセロトニン2ARとmGluR2を含む機能的複合体が幻覚誘発性化学物質に特有の作用に関与しているという意外な発見により、統合失調症に関するこの説が実証されたようだ。統合失調症患者の脳では、これら2つの受容体のバランスが崩れていることから、この複合体が精神障害の治療標的として有望な候補であることも考えられる。 2008年3月6日号の Nature ハイライト 環境:フロリダの赤潮 遺伝:周期的に起こるDNAメチル化 構造生物学:RNAの構造を塩基配列から予測する 海洋:酵素の亜鉛をカドミウムで代用 宇宙:プラズマ圏のコーラスライン 物理:クールな低温量子科学 材料:ヒドロゲルで作る人工組織 遺伝:共生菌のゲノム 神経:精神障害に関係する複合体 目次へ戻る