Nature ハイライト Cover Story:エボラウイルスの構造:ヒト生存者由来の抗体に結合した三量体表面タンパク質 2008年7月10日 Nature 454, 7201 エボラウイルスは最も恐れられている病原体の1つで、重篤な出血熱を引き起こし、ヒトの致死率は最高で90%にもなる。1994年以来、ウイルスの大流行は4倍に増えている。霊長類で最初に行われたワクチンの臨床試験では期待のもてる結果が得られたが、ワクチンもウイルス曝露後の治療法もまだ確立されていない。このウイルスの病原性が非常に強い理由、また死亡例で免疫応答が非常に弱い原因も明らかになっていない。今回スクリプス研究所のグループが、生存患者から単離した中和抗体と結合したエボラウイルス糖タンパク質三量体の結晶構造を決定した。この構造から、ウイルスの3個のGP1付着サブユニット(表紙の分子表面モデルでは、青・紺・濃緑で表す)が杯型構造を形成し、これが3個のGP2融合サブユニット(白色部分)によって支えられていて、受容体結合部位と推定される部位は、この杯型の内側に隠れていることがわかった。受容体結合部位への接近は、グリカンキャップと突き出したムチン様ドメインによって制限されている。抗体(黄色で示す)はGP1サブユニットとGP2サブユニットを架橋するが、この抗体は融合前の表面コンホメーションをとったGP2に特異性を示す(Article p.177, Author page)。表紙画像は、Christina CorbaciとMichael Piqueによる。 2008年7月10日号の Nature ハイライト 生理:明らかになったオプシンの構造 宇宙:石ころから生まれた衛星 宇宙:月に残る水の痕跡 物理:ボルマン分光法 地球:断層帯の応力 進化:カレイの両眼が片側に寄るまで 医学:IRF4に依存する骨髄腫 心理:多様性が生む協力行動 目次へ戻る