Nature ハイライト

遺伝:ヒトと酵母のかかわり

Nature 458, 7236

酵母のSaccharomyces cerevisiaeは、最も研究が進んでいるモデル生物の1つであり、何千年にもわたってヒトの生活と深くかかわってきた。今回発表された2本の論文では、その集団構造と、ほかの酵母との類縁関係が報告されている。Litiたちは、S. cerevisiaeのゲノムにみられる変異を、近縁な野生種でありながらヒトの生活とかかわりのなかったS. paradoxusと比較している。その結果、S. paradoxus分離株における変異は、地理的な境界と密接に関連していることが明らかになった。S. cerevisiaeは集団間の差異が少なく、これは少数回の個別的な栽培化があったというよりは、ヒトの介在によって交雑が起こる機会が増えたとする見方と一致する。またSchachererたちは、生態的に異なるニッチや地理的に異なる場所で分離された63株のS. cerevisiaeを比較した。その結果、これらの株は分離した場所によって、ブドウ畑、日本酒や同じような発酵物、実験材料の3群に遺伝学的に分類されることを示す証拠が得られた。彼らのデータは、これらの群は別々に栽培化された結果であって、S. cerevisiaeがひとまとめに栽培化されたわけではないとする仮説を裏付けている。

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