Nature ハイライト 気候:大西洋を巡る暖かい流れと冷たい流れ 2009年2月5日 Nature 457, 7230 大西洋の南北方向の鉛直循環(AMOC)は、全球気候に影響しており、暖かく塩分に富んだ表層水を高緯度域へと輸送することで、温暖な北西ヨーロッパ気候の維持にかかわっている。高緯度域で表層水は冷えて沈降し、大西洋の深部を通って南へ戻る。表層水のこの北へ向かう流れの過去のふるまいは、よくわかっていない。Thornalleyたちは、深層水形成領域へ流入する表層水の温度と塩分濃度の、完新世における変動を調べた。その結果、流入水の温度と塩分濃度が千年スケールで変動しており、過去に報告された急速な気候変化の期間とこれが相関していることがわかった。流入水は、亜寒帯北大西洋への淡水フラックスが増加する期間に、塩分濃度が高くなる。モデル研究では、北極域の淡水フラックスの増加に応答してAMOCは弱まると予測されているが、流入水の塩分濃度が高くなれば、十年スケールで相殺可能である。新しいデータからは、過去の気候変化の合間にこのような負のフィードバック機構が働いていた可能性が示唆されている。 2009年2月5日号の Nature ハイライト 工学:印刷されたトランジスター 材料:伸縮可能なグラフェン膜 生理:構造を解いて謎を解明 宇宙:初期宇宙に生じた銀河のバルジ形成 気候:大西洋を巡る暖かい流れと冷たい流れ 古環境:長い長い話 進化:最古の後生動物 生理:絶食で長生きする 目次へ戻る