Nature ハイライト 細胞:壁のない生活 2009年2月12日 Nature 457, 7231 細菌は細胞壁によって、物理的および化学的な損傷や浸透圧による溶菌から守られている。しかし、いくつかの細菌種では、細胞壁を欠くと考えられるL型細胞がまれに観察されている。これらの細胞は、宿主免疫系による認識を回避したり、細胞壁合成を標的とするペニシリンなどの抗生物質から免れたりしている可能性がある。だが、L型細胞は、増殖させたり操作したりすることが非常に難しいため、研究が困難である。今回、一般的なモデル細菌である枯草菌(Bacillus subtilis)の遺伝学的に扱いやすいL型細胞を作り出す方法が開発され、状況が変わりそうだ。この新しい系を用いて手始めに得られた知見から、L型細胞の増殖には細胞壁合成が必要ではないこと、また、正常な細胞分裂装置が不要であることが確かめられた。その代わりに、L型細胞は増殖のために、「突出-分割機構」を使い、単一段階で多数の子孫細胞を作り出す。これらの知見には、進化的な意味があると考えられる。細胞壁は細菌亜界全体にみられるので、おそらく、起源の古いこれらの生物の最終共通祖先に存在していたと考えられる。L型細胞が使う今まで知られていなかった複製過程は、細胞壁の出現前に使われた増殖様式を知る手がかりになるかもしれない。 2009年2月12日号の Nature ハイライト 細胞:壁のない生活 遺伝:エンハンサーの地図を作る 化学:ホウ素の新しい形態 ナノテクノロジー:微細なプリント 遺伝:霊長類ゲノムにおける爆発的重複 医学:C型肝炎動物モデルへの手がかり 細胞:血液細胞系の発生 がん:前立腺がんのマーカーを発見 細胞:ヒトのリボスイッチが初めて見つかった? 目次へ戻る