Nature ハイライト 医学:炎症が火種となる癌 2004年9月23日 Nature 431, 7007 慢性炎症と癌の関連が突き止められた。この発見は、新たな抗癌剤の開発に役立つかもしれない。ヒトの癌の約20%は、慢性炎症が原因だと考えられている。しかし、発癌物質と癌の関連は広く認められているが、炎症と癌とをつなぐ環は明らかにされていない。今回Y Ben-Neriahたちは、このミッシングリンクにあたる物質の候補として、NF-κBと呼ばれるタンパク質をあげている。肝炎と肝臓癌を自然発症する遺伝子操作マウスを使って実験したところ、症状が悪化するにつれ、炎症によって肝細胞のシグナル伝達タンパク質NF-κBの活性化が促されることがわかった。NF-κBの働きを遮断すると、本格的な癌への進行を妨げることができた。この研究が示すように、NF-κBは炎症が関連する種類の癌で重要な役割を果たしており、今後、薬剤による治療の標的になると考えられる。 2004年9月23日号の Nature ハイライト 宇宙:火星の海から抜けた炭酸塩 環境:島の社会の運命を分けた森林減少 環境:ツンドラの炭素貯蔵は満タン 物理:光で壊す 生態:絶滅への道筋を描き出す 植物科学:モルヒネを作らないケシ 医学:炎症が火種となる癌 目次へ戻る