地球温暖化の影響は極地域で最も顕著であると考えられている。事実、高緯度地域の生態系の観測からは、地球温暖化が進行中であることが示唆されている。しかし、物ごとにはふつう暗い面もあれば明るい面もある。地球温暖化の及ぼす影響の1つとして、ツンドラの生態系が地下に隔離する炭素量が増え、これが温暖化を留めるブレーキの役割を果たすと考えられている。ところが残念なことに状況は逆のようだとM C Mackたちが今週号で報告している。アラスカのツンドラにおける一連の肥沃化実験の結果、使える栄養分が多くなり、過去20年間に1 m2あたり約2 kgの炭素の純消失が起こったことがわかった。つまり、地表の植物の年間生産量は実験期間中に倍増したが、こうした炭素の隔離では、深い土壌層からの炭素および窒素の消失を埋め合わせられないことも明らかとなった。結論として今回の研究から、高緯度における温暖化に伴う土壌養分の消失が、土壌からの炭素放出をさらに拡大して、生態系の炭素の純消失と、気候温暖化に対する正のフィードバックを招く恐れがあることがわかる。