Nature ハイライト 材料:遷移金属イオン間の電荷移動 2009年3月5日 Nature 458, 7234 遷移金属酸化物への「外来」元素の導入は化学ドーピングと呼ばれ、金属陽イオンの原子価状態を変えるため、材料全体の物理的特性を変化させることができる。このような変化の中にはめざましいものがあり、その例が銅酸化物の高温超伝導やマンガン酸化物の巨大磁気抵抗効果である。Y Longたちは、ドーピングではなく、ホスト構造体中の異なる陽イオン(鉄と銅)の間で電荷を移動させることにより、原子価状態が変化する酸化物系であるペロブスカイトLaCu3Fe4O12を発見した。電荷移動の結果として、この材料は、異常に高いFe3.75+状態の鉄イオン(一般的なCu2+イオンと組になっている)をもつものから、珍しい原子価状態のCu3+イオンをもつものへと可逆的に変化させることができる。このような変化はこの材料の磁気特性や電気特性に反映されるので、これは加熱すると、転移によりやや収縮するというおもしろい性質を示す。この効果は温度に対して敏感であるため、この材料は工学への応用の強力な候補となる。 2009年3月5日号の Nature ハイライト 宇宙:連星ブラックホール見つかる 材料:遷移金属イオン間の電荷移動 地球:バム地震の後で 海洋:脂質の不足に代用品で対処 細胞:抗生物質の標的にならない? 免疫:リンパ球の活性化 遺伝:遺伝子融合と前立腺がん 構造生物学:タンパク質の構造をライブで見る 目次へ戻る