Nature ハイライト 生態:住処が変われば 2009年4月30日 Nature 458, 7242 適応放散の進化的過程は、多くの生態学的要因に左右される。しかし逆に、適応放散は生態系に何らかの影響を及ぼすのだろうか。意外なことに、進化的多様化が生態系に与える影響に関する研究は、まだ少ない。Harmonたちは今回、そうした影響が存在することを実験により明らかにした。最近起こった適応放散により生じ、現在は異なるニッチに定着したイトヨ2種と、それらの共通祖先種に似たジェネラリストである近縁種1種が、生態系に与える影響を調べたのである。実験は、カナダのブリティッシュ・コロンビア州テクサダ島の複数の湖沼に由来する個体を、湖沼の水を蓄えたメソコスム(疑似環境実験水槽)内に入れて行った。種の多様化は、餌生物の群集構造や生態系の総生産量を変化させ、溶存有機物質に対する間接的影響を介して系内の光透過のスペクトル特性を変化させることが示された。実験は10週間という短期間ではあったが、最近多様化した種が生態系に対して非常に多様な影響を及ぼす可能性があることがわかった。 2009年4月30日号の Nature ハイライト 細胞:核外で働く腫瘍抑制因子p53 細胞:脂肪滴とオートファジー 宇宙:銀河面リッジの謎を解き明かす 工学:超高速度カメラ 材料:孔の大きいゼオライト 生態:住処が変われば 神経:線虫も社会の渦中にある 細胞:siRNAを特定の標的へ送達する 目次へ戻る