Nature ハイライト 医学:トリパノソーマの分化 2009年5月14日 Nature 459, 7244 睡眠病の病原体であるトリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)は、ほかの多くの寄生生物と同様に、昆虫と哺乳類宿主がかかわる複雑な生活環をもっている。ヒトの血液中で生活する段階からツェツェバエ中で生活する段階への分化には、低温とクエン酸(あるいはcis-アコニット酸)という2つのシグナルが必要であることはずっと以前から知られていたが、これらのシグナルが受容される機構は明らかではなかった。今回、トリパノソーマの分化に必要な環境シグナルを伝達する細胞表面分子が、トリパノソーマのカルボン酸輸送体ファミリーのPADであることが明らかとなった。血流型のトリパノソーマのうち伝播可能な「stumpy(ずんぐり)」型はほっそりした型より頑丈で分化能をもつが、PADタンパク質をもっているのがこのstumpy型であることは重要である。 2009年5月14日号の Nature ハイライト 医学:トリパノソーマの分化 神経:単一ニューロンでにおいを嗅ぐ 宇宙:惑星形成:塵からできた結晶 工学:高効率白色発光ダイオード 化学:生命を出現させたRNA 考古:最古の女性像 医学:世界の見方が違っている 遺伝:海で見つかった低分子RNA 目次へ戻る