Nature ハイライト

宇宙:鉄のL輝線で探るブラックホール

Nature 459, 7246

鉄のK殻から基底状態へ電子が遷移する際に生じる輝線(K線)は、ブラックホールを取り巻く高密度の降着物質が硬い連続X線で照らされて生じる反射スペクトルに顕著にみられる。対応する鉄L輝線も、鉄の存在量が多い場合には検出できるはずだ。これは理論上の話だが、今回、狭輝線セイファート銀河1H 0707で、鉄の広K輝線だけでなく広L輝線も観測された。直接観測された連続X線と、ブラックホールに落下する物質による反射光の間には約30秒の反射による遅れがあり、この値は超大質量ブラックホールを取り巻く領域の最も内側の半径を光が横切る時間と同程度である。この発見は、こうした天体に存在する、ブラックホールの事象の地平線近傍での現象を研究する手がかりとなる。

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