Nature ハイライト 海洋:北極海に氷が現れた時期 2009年7月16日 Nature 460, 7253 過去において、北極海には海氷が常にあったわけではなく、この気候的に敏感な海域の海氷の歴史については、実のところほとんどわかっていない。始新世中期の海洋堆積物中に、海氷や氷山によって運ばれた岩石片が最近発見されたことで、氷は約4,600万年前に北極海に現れたと考えられるようになった。しかし、気候との関連が陸上の氷河の氷と海氷では異なるため、岩石片の起源がこの2つのどちらなのかを区別することは重要である。今回ACEX(北極海掘削航海)計画で得られた海洋堆積物コアの解析から、北極海中央部の海床下約260 mに、海氷に依存して生活していた針状の珪藻であるSynedropsis類のよく保存された化石が大量に存在することが明らかになった。このことを、鉱物粒の詳細な解析と組み合わせると、約4,750〜4,550万年前には、海氷や氷山によって運ばれる岩石片の主要な供給源は、海氷であったことが示唆される。この結果は、北極海における氷の最初の出現を125万年、海氷中で生活する珪藻の最初の出現を1,600万年早めることになる。 2009年7月16日号の Nature ハイライト 霊長類学:霊長類考古学という新分野 宇宙:小惑星帯に見られる多様性 海洋:北極海に氷が現れた時期 気候:氷期の気候の調整機構 生態:生物多様性への道 遺伝:共通するマラリア耐性 生理:ラパマイシンで長生き? 発生:アザラシ肢症を考え直す 目次へ戻る