Nature ハイライト

物理:人工グラフェンのもつスピン

Nature 460, 7259

トポロジカル絶縁体は、スピン‐軌道結合として知られる相対論的効果からバルクの絶縁性ギャップや、よく研究されている二次元カーボンシートであるグラフェンの相対論的粒子に似たディラック型の表面状態を生じる物質である。このような新しい二次元表面状態は、グラフェンの従来型ディラックフェルミオンとは対照的に、正味の固有角運動量あるいはスピンをもち、トポロジーから生じる散乱に対してこれらのスピンが保護されていることが理論によって示唆されている。これは、スピントロニクスや量子計算で強く求められていた特性である。今回2つの研究グループが、この予測の正しいことを報告している。Hsiehたちは、スピンと運動量を分解した分光画像化法を使って、ビスマス系トポロジカル絶縁体のグラフェン型の状態がスピン分極性であることを確かめ、これを化学操作によってトポロジカル輸送領域へと調整できることを実証した。またRoushanたちは、走査トンネル顕微鏡と角度分解光電子放出顕微鏡を使って、原子スケールの強い無秩序性があるにもかかわらず、反対の運動量と反対のスピンをもつ表面状態間に後方散乱がないことを証明した。これは、スピントロニクスや量子計算の応用に有用となる特性である。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度