Nature ハイライト

細胞:p53はがんと幹細胞性を関連付ける

Nature 460, 7259

転写因子p53は、がん抑制因子として機能することが知られており、p53をコードするTP53遺伝子にはヒトがんの50%以上で変異が認められている。今回5つの論文によって、p53は誘導(人工)多能性幹(iPS)細胞を作出する障壁でもあることが示唆された。Hongたちは、iPS細胞を作出するために一般的に用いられる4つの因子のうちの1つであるMycレトロウイルスがなく、また再プログラム化因子がゲノムに挿入されない方法を使った場合でも、p53欠損細胞では多能性が誘導されることを示している(p.1132)。Liたちは、Rb経路やp53経路で使われる3つのがん抑制因子をコードするInk4/Arfが、iPS細胞への再プログラム化を律速しており、Ink4/Arfの抑制によってiPS細胞の作出が促進されることを明らかにしている。彼らはまた、老化はInk4/Arfの発現を上昇させ、老齢個体由来の細胞では、再プログラム化の効率が低下することも示している(p.1136)。川村晃久たちは、p53をサイレンシングしておき、Oct4およびSox2の2つの因子のみを使って体細胞を再プログラム化した。p53の過剰発現、あるいはp53安定化因子の存在は、再プログラム化効率を低下させる(p.1140)。Utikalたちは、再プログラム化されない細胞でp53を欠失させると、iPS細胞を作出する能力が回復し、またp53を欠く不死化細胞株では、再プログラム化が高効率で起こることを示している(p.1145)。Mariónたちは、p53は、ある種のDNA損傷をもつ細胞の再プログラム化防止に重要であることを明らかにした(p.1149)。DNA損傷がある場合でも、p53を除去すると効率のよい再プログラム化が可能となる。News & Viewsでは、V KrizhanovskyとS Loweが、これらの結果とこの非常に活発な分野で最近発表されたほかの論文を関連付け、がん細胞とiPS細胞の薄気味の悪い類似性という問題に言及している(p.1085)。

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