実験的に作られた天然痘ワクチンについて、サルとマウスでの試験で有望な結果が得られている。今回の結果は、現在使われている天然痘ワクチンを受けられない人達のための代替ワクチンに結びつくかもしれない。B Mossたちは、改変ワクシニアウイルスAnkara(MVA)を投与したサルでは、サル痘(ヒトの天然痘に似ている)に対する免疫ができたと報告している。投与を受けなかったサルは、サル痘ウイルスに曝された後、発症して重症となった。MVAを投与後に既存の天然痘ワクチンDryvaxを投与すると、サルの抵抗力は最も強くなった。このことは、MVAが「予備投与ワクチン」として使える可能性を示している。天然痘の危険性が具体化したときにDryvaxを追加投与すればよい。また、医学的理由からこれまでのワクチンが使えない場合の代替ワクチンとしてMVAを使う可能性も考えられる。Mossたちは、Proceedings of the National Academy of Sciencesに発表した別の研究ではMVAとDryvaxを免疫無防備状態のマウスに投与した。Dryvax投与では、大幅な体重減少、皮膚の潰瘍が見られ、最後には死に至った。しかしMVAの場合は1,000倍量投与しても、免疫無防備状態のマウスの健康状態に影響はなかった。Mossたちは、健康なマウスではMVA接種でもDryvax接種でもポックスウイルスに対する同程度の免疫効果が得られたと報告している。MVAはさらに、特殊な免疫不全状態のマウスでも防御効果を示した。これらの結果は、MVAが、免疫無防備状態の人達に対するDryvaxの代替ワクチンとして適当である可能性を示している。