Nature ハイライト 細胞:もう1つのDNA修復機構 2010年11月18日 Nature 468, 7322 アルキル化されたり脱アミノ化されたりしたDNA塩基は、修復酵素であるDNAグリコシラーゼによって除去される。この過程によってゲノムの完全性が保たれるが、これは同時にアルキル化剤によるがん治療の妨げにもなる。これまで研究されてきたDNAグリコシラーゼでは、アルキル化や脱アミノ化修飾された塩基が酵素の活性部位に入り込むという仕組みにより除去される。最近発見されたDNAグリコシラーゼAlkDの構造が今回解明され、全く異なる除去機構が明らかになった。この酵素では、修飾された塩基がらせんの外側へと押し出され、それによってN3-アルキル化塩基、N7-アルキル化塩基を特異的に切り取ることが可能になる。AlkDのHEAT縦列反復ドメインとDNAとの相互作用がDNA骨格を歪めるので、非ワトソン・クリック塩基対が検出できるようになるのだ。酵素AlkDは細菌、古細菌、植物、真核生物に広く存在しており、アルキル化による損傷をゲノムから除去する別の機構が進化してきた理由は興味深い問題である。 2010年11月18日号の Nature ハイライト 宇宙:WIMP発見の正念場 脳:ニューロン活動の順序を生み出す指令の連鎖 植物:植物ホルモンであるジャスモン酸の三者受容体 細胞:もう1つのDNA修復機構 物理:エンタングルメントの多ネットワーク化 材料:甲虫の外骨格をまねた新しいキラルネマチック材料 海洋:漁獲物に基づく漁業データでは予測を誤りかねない 進化:気候に決定される性 遺伝:ニューロンにおけるレトロ転位 目次へ戻る