Nature ハイライト
海洋:漁獲物に基づく漁業データでは予測を誤りかねない
Nature 468, 7322
商業漁業は、被食者(カキやマイワシなどのプランクトン採食種)を狙わずに、まず最高位の捕食者(マグロなど)を大きく減少させる「海洋食物網の上から下へ向かう漁獲」であると一般にいわれている。しかし今回、新しい全球的データから、海洋生態系の栄養段階を貫く形で下方へ向かうこのような順序立った減少パターンを示す証拠はあまりみられないことが明らかになった。むしろ、海洋指標として広く採用されている、漁獲物から導かれる平均栄養段階(MTL)のモデル予測と、実際の生態系から得られるMTLとの比較による結果のほうが、海洋食物網のすべての段階にわたって漁獲が増大してきたことを示している。この傾向は、漁獲物に基づくデータを使うと隠れてしまう可能性があるため、もし今後の漁業の崩壊(と回復)を正確に監視しようとするなら、漁獲物に基づいた指標から、科学的な調査やモデルを用いた真の存在量傾向の追跡へと重点を移行させることが必要かもしれない。