Nature ハイライト

生化学:幹細胞の老化

Nature 443, 7110

今週号では、3 つの研究グループが幹細胞特異的に老化を調節するタンパク質の発見について報告している。これは、哺乳類の前駆細胞が分裂して新しい細胞を生み出す能力を加齢に伴って徐々に失うのはなぜなのかという、基本的な疑問を解明するのに役立つ。N Sharpless たちは、細胞周期の制御に関与し、加齢に伴って発現が増えることが知られているタンパク質、p16INK4a 腫瘍抑制因子を欠損するノックアウトマウスを作製した。3 つのグループが別々に行った、血液、膵臓、および脳の再生におけるp16INK4a の役割の研究から、p16INK4a がバイオマーカーであるだけでなく、老化のエフェクターでもあることがわかった。マウスでp16INK4a の発現の上昇あるいは低下の影響を比較することで、p16INK4aが、老齢マウスにおいてのみ幹細胞の増殖を停止させることがわかった。総合するとこれらの研究は、p16INK4a がその腫瘍抑制因子としての機能を介してがんの発生を減少させるが、それと同時に、幹細胞機能を減退させて老化に寄与していることを示唆し ている。これらの研究からは、2 型糖尿病が膵島の再生不全と関連している可能性や、特定の組織でこのタンパク質の働きを阻害することによって加齢による影響の一部を抑えられる可能性がみえてくる。

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