Nature ハイライト
構造生物学:風疹ウイルスのエンベロープ糖タンパク質の構造
Nature 493, 7433
風疹ウイルスは、子どもでは「ドイツはしか」とか「三日ばしか」などと呼ばれる比較的軽い病気を引き起こすが、子宮内でのウイルス感染は重篤な先天性の障害につながる。この先天性風疹症候群の発生率は、生ワクチンの接種によって西側諸国では低下しているが、開発途上国ではいまだに重大な健康問題になっている。今回F Reyたちは、風疹ウイルスのエンベロープ糖タンパク質E1の結晶構造を決定した。E1はクラスII型の構造を持ち、膜融合表面には金属結合部位がある。この構造から、風疹ウイルスのE1タンパク質は、同じファミリーに属するが、蚊によって媒介されるウイルス類のE1とは進化の過程で関係が遠ざかり、ヒトだけを宿主とするウイルスとして独自の生態学的地位を築いてきたことがわかった。これは、蚊によって媒介されるフラビウイルスと同じファミリーに属するが、同様にヒトだけを宿主とするC型肝炎ウイルスとの興味深い類似例と言える。
2013年1月24日号の Nature ハイライト
気候:エーミアン間氷期の気候の詳細な記録
神経:LTPと記憶について考え直す
宇宙:太陽コロナ加熱を垣間見る
環境:耕作限界地でのバイオ燃料生産
地球:「安定した」断層部分の激しい活動
神経科学:うつに果たす腹側被蓋野ニューロンの役割
細胞:抗がん機構としてのセリン欠乏
構造生物学:風疹ウイルスのエンベロープ糖タンパク質の構造
生化学:TET2はヒストン修飾を促進する